京都アルファネット事件上告審決定

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最高裁第3小法廷、平成11年(あ)第1221号、平成13年7月16日判決(上告棄却)

決   定

     本籍 <略>

     住居 <略>

                      コンピュータソフトウェア開発業

                                  A
                             昭和○○年○月○日生

 上記の者に対するわいせつ物公然陳列被告事件について、平成11年8月26日大阪高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主   文

        本件上告を棄却する。

理   由

 弁護人川口直也外3名の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切ではなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお、所論にかんがみ、職権により判断する。

 原判決の認定によると、被告人は、自ら開設し、運営していたいわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクにわいせつな画像データを記憶、蔵置させ、それにより、不特定多数の会員が、自己のパソコンを操作して、電話回線を通じ、ホストコンピュータのハードディスクにアクセスして、そのわいせつな画像データをダウンロードし、画像表示ソフトを使用してパソコン画面にわいせつな画像として顕現させ、これを閲覧することができる状態を設定したというのである。

 まず、被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードディスクは、刑法175条が定めるわいせつ物に当たるというべきであるから、これと同旨の原判決の判断は正当である。

 次に、同条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは、その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないものと解される。被告人が開設し、運営していたパソコンネットにおいて、そのホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置させたわいせつな画像データを再生して現実に閲覧するためには、会員が、自己のパソコンを使用して、ホストコンピュータのハードディスクから画像データをダウンロードした上、画像表示ソフトを使用して、画像を再生閲覧する操作が必要であるが、そのような操作は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを再生閲覧するために通常必要とされる簡単な操作にすぎず、会員は、比較的容易にわいせつな画像を再生閲覧することが可能であった。そうすると、被告人の行為は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いたものというべきであり、わいせつ物を「公然と陳列した」ことに当たると解されるから、これと同旨の原判決の判断は是認することができる。

 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

 平成13年7月16日

  最高裁判所第三小法廷

    裁判長裁判官 奥 田 昌 道

         裁判官 千 種 秀 夫
         裁判官 金 谷 利 廣
         裁判官 濱 田 邦 夫

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